アラサー女子のライター・五月女菜穂さんが、旅先で出会った人々、人生で出会った本についてつづります。
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1泊1部屋24万円。これまでの人生で、いや、恐らくこれからの人生でも、一番高額な宿泊料の部屋に泊まることができた。横浜のクラシックホテル・ニューグランドにある、315号室。その名も「マッカーサーズスイート」。あのマッカーサー元帥が宿泊した部屋である。
【写真】ホテルニューグランドの「マッカーサーズスイート」の様子はこちら
以前、この連載でも書いたことがあるが(#22 はじめての「日本クラシックホテル紀行」)、夫の影響で、日本のクラシックホテルをめぐる旅を密かに実行している。9つのクラシックホテルで構成される「日本クラシックホテルの会」発行の「クラシックホテルパスポート」(税込1500円)を使って、3年間の間に4つのホテルを巡ればペア食事券、9つのホテルをすべて巡ればペア宿泊券がプレゼントされるのだ。
夫の誕生日、結婚記念日、そして私の誕生日と年3回のペースで国内旅行に行き、この「大人の贅沢」を楽しんでいる。これまで日光金谷ホテル、蒲郡クラシックホテル、川奈ホテルと泊まり、4つ目に選んだのが、ニューグランドだった。
義父母がかつて結婚式を挙げたり、ニューグランド内のレストラン「ノルマンディ」で食事会を開いたりと、かねてよりご縁はあったのだが、宿泊したのは初めて。本来、本館の一室を予約していたのだが、チェックインの際に「マッカーサーズスイート」へのグレードアップを勧められ(どうやら奇跡的に空きがあったようだ)、手頃な価格で宿泊ができることになった。幸運としか言いようがない。
ところで、なぜマッカーサーはニューグランドに宿泊したのか。
1945年8月30日、厚木飛行場に到着したマッカーサーがまっすぐに向かったのが、ニューグランドだった。そもそも進駐軍が最初の滞留地を横浜としたのは、戦火を逃れたニューグランドがふさわしいという意見があったからと伝えられているそうだが、マッカーサー自身、以前(1937年)新婚旅行でニューグランドに宿泊したこともあったというから、どこかでノスタルジーのようなものを感じていたのだろうと思う。まぁ、その8年の間に起こった出来事を考えれば、新婚旅行の記憶など消えているかもしれないし、単純に横浜港が見える一室が気に入っただけかもしれないが。
横浜を舞台にした著作が多い小説家の山崎洋子が『横浜の時を旅するーホテル ニューグランドの魔法』(春風社)という本を書いている。ニューグランドに携わるさまざまな立場の人から話を聞いて、まとめた一冊だ。いろいろとニューグランドの歴史を知ることができるのだが、中でもあとがきに書かれていた一節が印象的だった。
『ホテルが大好きです。おびただしい数の人生がしばし留まり、眠り、目覚め、喜び、悲しみ、怒り、笑い、絶望し、希望を得、また分かれていく不思議な空間。ロビーに足を踏み入れただけで、ミステリーの最初のページを開くときのようなときめきを覚えます。(276ページ)』
現存している「マッカーサーズスイート」はリニューアルされているものの、マッカーサーが使ったという机と椅子はそのまま置いてある。部屋自体は決して広々としているわけではないが、長い歴史を刻んできたという自負がある空間。本当に偶然だったが、一生心に残る、忘れられない宿泊体験ができた。感謝したい。
〈五月女菜穂 プロフィール〉
旅するフリーライター。1988年東京生まれ。大学卒業後、朝日新聞に入社し、新潟、青森、京都で記者経験を積む。2016年11月からフリーランスで活動を始め、取材・編集・撮影をしている。17年1~3月に12か国をまわる弾丸世界一周旅に行き、同5月に写真展兼物販販売会を開催。渡航国は40か国超え。
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April 28, 2020 at 09:10AM
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