大学入学共通テストが終わり、本格的な受験シーズンが幕を開けた。早々と推薦入試で合格を決めた新入生は部屋探しの真っ最中。春に多くの新入生を迎える仙台市内では、地下鉄沿線の賃貸物件に動きがあるという。人気の地域や家賃相場、物件選びの注意点を不動産会社などに聞いた。(編集局コンテンツセンター・佐藤琢磨)
仙台には1万人以上の学生を抱えるマンモス校が二つある。学部生、大学院生合わせて1万6000人以上の東北大と、同じく1万1000人以上の東北学院大だ。
学生向け賃貸物件を多く扱う平和住宅情報センター(泉区)の佐々木哲也さんは「東北学院大など私立大進学者の部屋探しは1月がピーク。東北大をはじめとした国公立大は2次試験のある2月下旬以降でなければ決まらないが、情報収集は既に活発だ」と指摘する。
全国から学生が集まる東北大は新入生の約8割、1500人ほどが部屋探しに奔走。東北学院大では新入生約900人が1人暮らしをするとみられる。
「学都」での物件探しは、他都市よりも競争が激しいのだろうか。佐々木さんによると、東日本大震災後に一時数が減った賃貸物件は、震災前の水準に回復。「条件を広げれば十分に見つかる」と言う。
近年は新型コロナウイルスの影響で部屋で過ごす時間が長くなり、多少家賃が高くても利便性や快適性を重視する傾向がある。オンライン授業が広がり、無料で使えるインターネット設備は特にニーズが高い。
泉キャンパス近隣から中心部へ
1年後には、学生向け物件の分布図が塗り替わりそうなイベントが控える。
東北学院大は2023年4月、仙台市立病院跡地に五橋キャンパス(若林区)を開設、泉キャンパス(泉区)と多賀城キャンパス(多賀城市)を集約する。
新キャンパスは市地下鉄南北線の五橋駅に直結し、アクセスが良い。南北線沿線の物件への問い合わせが増えていると佐々木さんは明かす。
泉キャンパスには教養学部生と、4学部の1、2年生合わせて約5500人が通う。周辺には学生向けのアパートが林立する。一部の物件は契約条件を緩和するなどしており、今年は泉キャンパス近くに決める学生が多いが、佐々木さんは「来年は分からない」と変化をにらむ。
「泉キャンパス近隣の東北学院大生は今後、南北線沿いに散らばるだろう」と読むのは、全日本不動産協会宮城県本部相談室室長の菅原四郎さん。五橋キャンパスや土樋キャンパス(青葉区)に徒歩圏内の愛宕橋駅、河原町駅辺りを「新築は少ないが狙い目」と薦める。
2次試験に合わせて仮押さえ
部屋探しの次のピークは東北大の2次試験が始まる2月25日前後だ。「合格したら必ず入居」といった条件付きで仮押さえできる「合格発表前予約システム」が使える物件もあり、子どもの受験に合わせて下見する保護者が押し掛けるという。
東北大は川内キャンパス(青葉区)の近くに住む学生が半数に上るが、川内キャンパスや青葉山キャンパス(青葉区)につながる市地下鉄東西線の沿線も需要が上昇している。
東北大生協不動産・ガス事業部次長の相沢真澄さんは「乗り継ぎに慣れた首都圏の学生には、地下鉄一本で通学できるのは魅力的なようだ」と説明。菅原さんも「東西線の連坊駅や薬師堂駅周辺も交通の便が良い」と話す。
地下鉄沿線の家賃相場は表の通り。築年数や面積で変わるが、1人暮らしの学生向けの家賃は平均4万~5万円台(1K6~8畳)と、この数年は変わらない。
契約前に親子で現地の確認を
物件を決める上で注意したいのが事前の調査と契約書だ。
コロナ禍の影響もあり、インターネットだけで部屋を決める例が少なくないという。「写真や動画は広く見える。付属のエアコンやネット環境といった設備、日当たりや通学路の治安など、実際に現地を見ないと分からないこともある。できる限り親子そろって来てほしい」と菅原さんは呼び掛ける。
入退居時のトラブルを避けるためにも、諸経費については契約書を隅々まで確認することが大事だ。菅原さんは「数年を暮らす部屋。契約に労を惜しまず、すがすがしい新生活を送ってほしい」と助言する。
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