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Sunday, May 22, 2022

玄関から寝室までフラットな部屋。美大卒夫婦のセンスが光る築52年のリノベマンション - roomie

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小林ユリ

小林ユリ

Photographed by Kenya Chiba

寒さが和らぎ、暖かな日差しが心地いい季節になってきました。

春の訪れを感じながらワクワクした気持ちで向かったのは、都内某所にあるFさんと奥さんの住まい。3年ほど前、駅近の中古マンション購入後にリノベーション工事を行ったそうです。

リノベーションしたキッチン

美大卒のおふたりが暮らすお家は、ここはギャラリーかそれともアトリエかと見間違うほどハイセンスなインテリアが印象的です。少しマニアックで雰囲気のある小慣れ感の中に、クールさがチラリ。

適度な広さの空間の中に「見せる収納」と「隠す収納」がバランスよく織り混ぜられていて、窮屈さや生活感は感じられません。

名前(職業):Fさん(デザイナー)、奥さん(教師)※取材当日はご不在
場所:東京都
面積:約57.48㎡(1LDK)
リノベーション費用:1,300万円
築年数:52年(リノベーションして3年)

この部屋に決めた理由

以前住んでいたところから近いエリアで物件を探していたというFさんご夫妻。現在のマンションは、Fさん曰く「物語の中に出てくる探偵事務所がありそうな」、クラシカルな雰囲気が気に入って購入を決めました。

おふたりとも“オートロックで壁が真っ白でキレイな新築の物件”にはあまり興味がなかったそうです。

購入の条件は「マンション全体の規則が厳しくないこと」「リノベーションできること」「駅近であること」「60㎡くらいの大きさ」の4つの点をクリアしていることだったのですが、思い描く物件がなかなか見つからず、家探しはかなり難航したそうです。

リノベーションした寝室

「自分たちの好きなようにリノベーションをしたかったので、規則が厳し過ぎるマンションは向かないかなと思ったんです。ここは築年数は経っていますが、リフォーム工事に対しての理解が深く、自分たちの思い描いたリノベーションが実現できました。

私も妻も美術系の学校出身なので、一応壁の色にも気をつかおうということになったんです。イメージしているのは公共施設の壁の色。公共施設の壁って、実は真っ白ではなく、少し色味が入っているんですよ。この壁のおかげで、派手なソファを置いてもちゃんと馴染んでくれます」(Fさん)

リノベーションしたLDK

自分たちでいじって、自分たちの色にしたい。この願いが叶えられるかどうかが、今回の家探しにおいて外せない条件でした。

自分たちの暮らしに合わせて部屋をデザインできない物件は条件外だったため、あえて中古の物件を探したそう。間取りや内装のデザインはもちろん壁の色にも意識を向けたそうで、Fさんの家の壁は全体的に低彩度で穏やかな配色になっています。

物件探しからリノベーションはEcoDecoさんに依頼しました。インターネットで施工事例を見て、「自分たち好みの部屋をたくさん施工している」ことが決め手になったそうです。

ベランダからの眺め

またマンションの上層階というだけあって、窓からの眺望も抜群です。内見時、奥さんはベランダから見えるこの景色にひとめぼれ! 洗練された都会の景色を眺められる点も、この部屋の“推しポイント”なんです。

お気に入りの場所

サブウェイタイルで装飾した、ホテルライクなお風呂

リノベーションしたバスルーム

洗面所と浴室の境はガラスのドアで仕切られています。ものが少なくスッキリとまとまっていて、ホテルライクな印象です。

「私は間仕切りは必要ないと思っていたのですが、妻に必要だと言われたので仕切りを設けることにしました。狭さを感じさせないよう、ガラス張りにしています」(Fさん)

サブウェイタイルを使った浴室

1900年代のはじめ頃、ニューヨークの地下鉄構内で使われはじめたと言われているサブウェイタイル。タイルというと丸みを帯びていない平坦なもののイメージしかありませんでしたが、サブウェイタイルは部屋の形にフィットするさまざまな形が用意されています。

「サブウェイタイルは角やコーナー用のタイルが用意されている数少ないタイルなんです。タイルは目地の掃除が大変なイメージがありますが、これはコーナーも隙間なく貼れるので掃除も楽ですよ!」(Fさん)

寝室に併設された洗面所と浴室なので、夜寝る前、朝起きてからの動線も完璧ですね。

使い勝手を考えた、料理がはかどるキッチン

リノベーションしたキッチン

おふたりとも料理が好きで、キッチンに立つのは半々くらい。お互いが使いやすいと感じるキッチンにするため、埋め込み式のオーブンやコンセント、パントリー、皿洗い用の水切り台など、造作で取り付けたアイテムが複数ありました。造作面はFさんが主導したそうです。

造作食器棚

料理好きなご夫婦のキッチンというだけあって、使い勝手がとてもよさそう! 調理スペースの動線もしっかりと考えられています。これなら最低限の動きで最大限のパフォーマンスを引き出してくれそうです。

お気に入りのアイテム

美術予備校時代の先生から譲ってもらったテーブル

ヴィンテージ風のテーブル

古材を使用したようなヴィンテージ感がオシャレな半円のテーブルは、予備校時代の先生が制作した30年前の作品です。

「先生がもういらないというので譲ってもらったんです。普段はここを食卓にしています」(Fさん)

友だちが自然と集まってくるキッチンテーブル

キッチンの作業台兼テーブル

「料理ができたらここに置くことが多いんですが、だからなのか友達を家に招待してお酒を飲んでいると、みんな自然とここに集まってきて立ち飲みをしはじめるんです」(Fさん)

作業台としても優秀なキッチンテーブルは、業務用厨房機器を扱うSINKO(シンコー)のもの。シンプルかつ丈夫で使い勝手がとてもいいそうです。

座り心地抜群! ワーナーの「シューメーカーチェア」

ワーナーの「シューメーカーチェア」

WERNER(ワーナー)の「シューメーカーチェア」は長時間座っていても座り心地がいい点がお気に入り。もともと長時間同じ姿勢で作業をする靴職人のために改良を重ねてつくられたイスなので、クッションなどを敷かなくても座り心地が抜群です。

「作業するときによく座っています。仕事をするときには背もたれにもたれかからないので、ちょうどいいんです」(Fさん)

独身の頃からの定番! リーン・ロゼのソファ

リーン・ロゼのソファ

Fさんは独身の頃からligne roset(リーン・ロゼ)の大ファンで、初めて買ったリーン・ロゼのソファは中古のものだったそう。以来、ソファはずっとリーン・ロゼを使用しています。

紫の千鳥格子柄が印象的なソファは展示品だったものを購入しました。もちろん、赤いオットマンもリーン・ロゼのものです。

ふんわりと包み込まれるような座り心地と、女性でも抱えられるソファ自体の軽さも魅力です。

ワークショップで奥さんが作ったスティールパン

自作のスティールパン

家にお邪魔してすぐに目に入ってきた可愛らしい楽器。ドラムのような太鼓のような、珍しいフォルムです。

壁掛けテレビの真下に置かれていたので、はじめは「インテリアかな?」と思ったのですが、実はオブジェとしてだけではなく楽器としても機能する逸品でした。

このスティールパンは奥さまがワークショップで作ったもの。ドラム缶から作られた音階のある打楽器で、カリブ海最南端の島国トリニダード・トバコ共和国で発明されました。

マレット(先端にゴムがついたバチ)で叩くと、何やら幻想的な癒しの音色が……! 民族音楽やヒーリングミュージックを思わせる音色にうっとりしてしまいました。

残念なところ

ヴィンテージマンション特有の苦労がある

コンクリート躯体の天井

「築52年の物件なので、雨漏りしている箇所があります」と、Fさんが指を差す方に目をやってみると、天井にビニールが貼られていました。

リノベーションで天井はコンクリートの躯体をそのまま見せて部屋をデザインしているFさんの家。でも、だからこそ雨漏りを早期に発見することができました。

「天井にクロスを貼っていたら、水がまわってしまってどこから雨漏りしているのかわからなかったでしょう。少量の雨漏りなら、まだ気付けていない可能性もありますよね」(Fさん)

ヴィンテージマンションの床

古さゆえの弊害をどう克服するかというのは、ヴィンテージマンションとは切っても切り離せない問題です。悪い部分への対処がすぐにできるよう、リフォームをする時点で何かしらの対策を講じておくことが肝心です。

雨漏りはマンション共用部に関わることも多く、改修する場合はマンションの管理組合と連携して修繕計画を進めていくことになります。

「やっぱり築年数が経過している物件の管理はそれなりに大変ですよ。不便を工夫して住むことが楽しめない人は、新築や築浅の物件の方が向いていると思います」(Fさん)

暮らしのアイデア

プライベートゾーンと来客ゾーンに区画分けした間取り

寝室

リノベーションを行うときに意識したのは部屋分けです。Fさんご夫妻は、家全体をオープンスペース(来客用にも対応できるエリア)とバックヤード(プライベートなエリア)に区画分けを行いました。

来客時に主に使用するのは玄関、リビング、キッチン、トイレです。ベッドルームと洗面所、浴室はプライベートな部分なので、ここの境目に引き戸を設けました。

寝室への入り口

来客時はドアを閉めることでプライベートな部分を覗かれずに済みますし、片付けが追いつかず多少散らかっていても気付かれません。玄関にはコートをかけるハンガーパイプがつけられているので、わざわざ寝室に友達のコートを持っていってかける必要もありません。

来客にもスムーズに対応できる空間と、自分たちだけのプライベートな空間。ワンフロアだと空間を分けることが難しいかと思いきや、生活のオンオフがしっかりと分けられていました。

掃除機がけはルンバにお任せ!フラットな土間スタイル

フラットな土間

掃除が楽になるように、玄関から家全体を土間にしてフラットにしました。

「以前は家の中に段差があったので、全部の部屋をルンバで掃除することはできなかったので、掃除機がけをルンバにお願いするために全てフラットにしました。引っ越してきたばかりの頃はラグを敷こうかと思っていたのですが、ルンバが引っかかってしまうことがあるので今はそのまま生活しています」(Fさん)

土間というと足元が寒いのではないかと思うのですが、真冬でもスリッパを履けば全く寒くないそうです。

土間リビング

「真冬用と春秋用と、スリッパを使い分ければ寒さは全く気になりません。戸建てやマンションの1階の部屋を土間にしてしまうと、おそらく地面からの冷気がダイレクトに伝わってきて寒いと思うのですが、上層階だと地面からの冷気が伝わってくることがないので意外と暖かいんですよ」(Fさん)

お気に入りのスリッパを履いてくつろぐ姿はとてもスタイリッシュ!

「外もの」と「内もの」を分別した収納スペース

充電コーナー

玄関とデスクの真ん中にある棚には、各種充電器や腕時計、アクセサリーなどが全て一箇所にまとめられていました。また上段に目を向けると、そこにはおふたりのバッグがずらり。棚のまわりには、コートを掛けられるスペースが設けられています。

「ご時世的にも外のものを家の内部まで持ち込みたくないので、外で使うものは全てひとつのコーナーにまとめています。充電器類もここにまとめました」(Fさん)

外で使うものの定位置が定まっていれば「昨日、帰ってきて腕時計をどこに置いたかしら?」とか「スマホの充電器が見当たらないんだけど、どうしよう!」というようなお悩みとは無縁です。空間と時間を有意義に使う工夫がされていました。

これからの暮らし

家って、どんなに完璧にデザインしたつもりでも、実際に生活をしていく中で「もっとこうしておけばよかったな」なんて感じる部分が出てくることが多いと思うのですが、希望や理想をギュッと詰め込んだ完成度の高いリノベーションを行ったことで、現時点の暮らしがもうすでに100点満点なんですって!

今の暮らしを今後もずっと楽しんでいきたいと思える家に住めるのは、とても幸せなことなのだと感じました。心から満足できる空間に身を置けるって、いいな〜!

小林ユリ

塾講師からライターへ転身。国内・海外問わず旅行が好きですが、それはやっぱりホームがあってこそ! 2020年に自宅をリノベし、好きなものを詰め込んだ暮らしをスタートさせました。2畳ほどの仕事部屋は旅先や外出先から持ち帰ったお気に入りのアイテムで埋め尽くされつつあります。

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