公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。
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「彼女のいない部屋」
家出をした女性の物語、のようだ-。映画会社の資料にあるストーリーの説明は、この1行のみ。本国フランスでの公開時にも物語の詳細は伏せられたが、ある真実に気づいたとき、観客は心を揺さぶられたという。
その宣伝文句通りの作品だ。バラバラのピースがつながったとき、「あっ、そうだったのか」と感動する。そして、さまざまな場面をもう一度、心の中で反芻(はんすう)することに。今もそのピース一枚、一枚を結びつける作業を楽しんでいる。こんなに長い時間、感動に浸れる作品は久しぶりだ。
主人公のクラリス(ヴィッキー・クリープス)が、夫と2人の子供が眠っている家を抜け出し、車を走らせる場面から始まる。彼女は家族を捨てて家出をしたのだろうか?
脚本の構成のすばらしさとともに、主人公の心理を巧みに表現していたクリープスの演技も良かった。監督は、仏映画界の名優としても知られるマチュー・アマルリック。本作が監督としての最高傑作との評価も。仏映画。
26日から東京・Bunkamuraル・シネマ、9月2日から大阪・シネ・リーブル梅田などで全国順次公開。1時間37分。(啓)
「異動辞令は音楽隊!」
捜査手法などが時代にそぐわないとして音楽隊に異動となった鬼刑事が、音楽同様、人生にも調和が大切だと気づくまでを描く人間ドラマ。
監督は「ミッドナイトスワン」の内田英治。主演の阿部寛をはじめ音楽隊員を演じる清野菜名(せいの・なな)、高杉真宙(まひろ)らに劇中で実際に楽器を演奏させた。ドラム演奏の特訓を受けた阿部のスティックさばきは確かに見事だ。
原案と脚本も内田。ややカタルシスに欠けるか。いや、そこは人生の複雑さから目を背けない内田監督ならではの後味か。被写界深度が浅く、コッテリとした色彩の映像が美しい。
26日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。1時間59分。(健)
「アキラとあきら」
「半沢直樹」シリーズや「下町ロケット」などの作家、池井戸潤の小説を三木孝浩監督が映画化。メガバンクに同期入社した山崎瑛=あきら(竹内涼真=りょうま)と階堂彬=かいどう・あきら(横浜流星=りゅうせい)。運命のライバルとなるアキラとあきらを、竹内と横浜が、それぞれの持ち味を生かして演じる。
「半沢直樹」ほどのアクの強さはともかく、中盤、困難に陥った瑛の奮闘は、もう少し熱血に描いてもよかったか。いや、三木監督らしいクールなタッチだからこそ新たな池井戸ワールドが誕生した。三木監督の公開作品は、この夏3作目を数える。
26日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。2時間8分。(健)
「NOPE/ノープ」
米のホラー映画「ゲット・アウト」「アス」で知られるジョーダン・ピール監督の長編第3作。前2作同様、黒人が主役。
ロサンゼルス郊外の田舎町で、牧場主が飛行機の落下物によって事故死する。そのとき、牧場主の長男、OJ(ダニエル・カルーヤ)が巨大な飛行物体のようなものを目撃。妹のエメラルド(キキ・パーマー)とともに動画撮影を試みることになるが…。
〝その〟正体がなかなか明らかにされないが、SFスペクタクル映画のようでもある。NOPEとは、否定の返事をするときに使うスラング。
26日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。2時間11分。(啓)
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