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Sunday, May 14, 2023

【実録】『半地下の部屋』に住んでみたらリアルに何かが狂いはじめた - ロケットニュース24

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2019年公開の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』は世界中で一大ブームになり、今年は日本版リメイクが舞台化されるなど、今なお話題は続いているようだ。韓国を含む諸外国において “半地下の家” は、しばしば貧困の象徴と描かれるらしい。

日本人の私としては “半地下” なんて若干楽しげな雰囲気さえ感じるが、やっぱ実際に住むと色々不便があるのだろうか? 本記事はそんな私が、予期せず半地下の家で約1カ月を過ごすハメになった真実の記録である。

・アテネにて

私がそのような事態に巻き込まれたのはギリシャの首都・アテネ。物価が高いヨーロッパ西側諸国を周遊してきた私は、ここアテネ(やや物価が安い)で「久々に広い部屋に泊まりたい」と考えていた。

そこで見つけたのはパルテノン神殿から徒歩20分のところにある1LDKマンション。キッチン、オートロック、洗濯機など全部揃って1泊3500円との触れ込みだ。ネットで画像を見る限り、かなり広そうである。私は意を決して約1カ月の予約を入れた。


そして実際のお部屋が……



これ!



あっちはお風呂!



そっちがキッチンで……



玄関は向こうだ!!!


・暗いにも程がある

真っ昼間にもかかわらず、異様なほど暗い室内。理由は考えるまでもなく「窓が小さすぎるから」。欧米人は1人の例外もなく風通しのよいベランダを好むはずだが、一体なぜ、こんなことになってしまったのか?


そう……実はこの部屋こそ、噂に聞く『半地下』だったのである。


小さな窓を部屋から見上げると、目の前には停車中の車。自分の顔と道路がちょうど同じ高さにあり、通行人の靴底を間近で観察できる仕様だ。ネットで見た画像はうまいこと処理してあったため、私は半地下であることに全く気づかなかった。ウカツだった。

近くにはゴミ捨て場があり、時おりツンと異臭が鼻をつく。雨が降れば跳ね返った雨水が、容赦なく部屋へ飛び込んでくる。なんていうか……牢屋みたいだ。


・半地下の実態

そして、この小さな窓さえも、基本的にはカーテンを下ろしておく必要があった。なぜなら通行人から中が丸見えだから。

電気をつければ普通に生活することは可能。だがしかし、これ、想像以上に心がどんどん削られていく。外はあんなに青く澄んでいるのに、心地よい風が吹いているというのに……私の寝床はジメジメした穴ぐら。こんなハズじゃなかったのに。

せっかくキッチンがあるので自炊を試みると、尋常じゃなく匂いがこもる。さらに数日が経過すると……


ハエが集まってきたァ!!!!!


小さな窓に張られたネットは、害虫の侵入を防いでくれる。が……裏を返すと、侵入した害虫の逃げ道も皆無なのだ。私は3週間、増減を繰り返す虫たちとの共同生活を余儀なくされた。

また風通しが悪く日光も届かないため、洗濯物は全く乾かない。仕方がないので玄関のドアを開け放し、わずかなすきま風にさらす……そしたら今度は蚊が入ってきたよ! 半地下暮らし、苦労多すぎるだろ!!!


・ひとすじの光

それでも料金を前払いしてしまったので、私は半地下の部屋に住み続けるしかなかった。

そんなある日、いつものようにドンヨリした気持ちでベッドから起き上がると……


あ……



猫だ。


ここギリシャは猫が非常に多い国。そのへんで野良猫が日向ぼっこをしている風景はとても絵になるが、だからといって他人の家をのぞき込んでいい理由にはならないと思う。半地下の家というのは、猫にまで見下されるものなのか?

ところが、そんな日々が続くうち、私の心にも変化が。

猫が来るのが待ち遠しくてたまらないのである。

哀れみとも慈愛ともとれる表情でジッと私を見つめる猫たち。単にエサの匂いをかぎつけただけかもしれないが……彼らの存在は半地下暮らしに咲く一輪の花として、私を励まし続けてくれたのだった。本当にありがとうございました。

想像した以上に “住めば天国” とはならなかった半地下での暮らし。もちろん色々な半地下があるので一概には言えないが、今後部屋を借りる際は注意しようと痛感した次第である。

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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