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Tuesday, September 8, 2020

自宅に“正しい色”の環境にしたい。部屋の灯りを高演色に - Impress Watch

光源によって、モノの見え方は変わります。部屋の照明を変えれば、部屋全体がバッチリな色で見えるようになるはずです

印刷所や、写真の色味が重要な出版物の編集部、パンフレットやカタログの制作現場では、色がきちんと確認できる照明環境を整えてあります。色が重要な美術館や博物館、病院などでも、そうしたちょっと特殊な灯りが使われます。

であるなら、自宅の仕事部屋の灯りもそうしたい! と思うのは不思議なことではないでしょう。しかし、すんなりとは進められませんでした。

色を正しく再現するには、高演色な灯りが必要です。雑誌でも本でも、出版物を制作する現場では、高演色な光源の下で色を確認します。そうしないと、きちんとした色で印刷されるか判断できないからです。

写真・映像を撮る時にも、欠かせない要素の一つです。屋内で写真を撮っていて、なんか色がパッとせず、どこかくすんだような冴えない感じだったり、妙に色が浅い感じだったりするときは、部屋の証明の演色性が低い可能性があります。人の目と脳は、なんとなくそれっぽく見えるようにできているので、パッと見に違和感はないのですが、写真に撮るとき演色性が低い光源では正しい色で再現されません。

最近増えているビデオ会議でも光源は重要です。単に明るくするだけでなく、演色性の高い光源を使った方が実際の肌の色に近く写ります。

ちなみに、机の上だけ、例えばプリントを見るだけでよければEIZOのLEDスタンドがあります。実売で24,710円(税込)と少々高価ですが、設置も楽です。

でも、残念ながら私は部屋全体を高演色な灯りにしたくなってしまったのです。

演色性とホワイトバランスの違い

色の見え方の違いというと、デジタルカメラのホワイトバランスを思い浮かべる人もいるかと思います。ホワイトバランスの調整は、赤っぽい光が強いからそれを整えるといったように、どちらかというと写真全体の色を正すことです。一方の演色性については、カメラのホワイトバランスの機能では補正できません。

白い光といっても、それは色々な光が合わさってできています。虹は空気中の水分によって光が分解されたものですが、赤から紫まで様々な色が含まれていることが分かります。つまり太陽光であれば、人が認識できる可視光でまんべんなく含まれているのです。白熱灯は赤っぽい光ですが、光の成分としては比較的まんべんなく含まれています。

しかし、それ以外のほとんどの人工的な照明だとそうはいきません。特定の色(波長)の光がほとんど含まれていないといったものもあります。その含まれていない色の光の部分は、正しく再現できないことになります。

物の色は、光源の光を反射して目に入ります。例えば赤いものは、赤い光の成分をよく反射しやすい物体であり、そうした光を反射する成分がないと赤く見えません。黒く沈んでしまいます。これが正しい色で見えず、正しい色で撮影できない理由です。

演色性を表す基準として、演色評価数のCRI(Color Renderring Index)があります。Raという100点満点の値で、主だった8つの色(R1~R8)が太陽光と比べてどれだけ再現できるかを平均で表し、Ra78のように使います。このほかに、特殊演色評価数としてR9~R15の7色もありますが、これは平均せずに各色個別に評価します。Raの値をみつつも、R9~R15も気にしたいという具合です。

ちなみに、撮影用に使う光源の多くは、Ra90以上です。カメラ内蔵のストロボでも、高演色にできています。

今回は、演色性をカラーメーターで計測しました。今回使ったのはセコニックのC-800(実売178,200円/税込)。

演色性は対応するカラーメーターで計測できます。今回使ったのはセコニックのC-800

このC-800でクリップオンストロボの光を計測してみました。

ストロボという撮影機材ということだけあって、Ra99.3はさすがです。スペクトルを見ても、紫から赤まで広くカバーしています。ちなみに、このクリップオンストロボは1990年発売のサンパック B3000Sですが、外光オートが2モード(F2.8とF5.6)あってデジタルカメラで使っても便利です

選択肢の少ない高演色の照明

前提が長くなりましたが、要は、高演色な灯りの部屋にしておけば、写真集などもちゃんとした色で見られますし、その部屋の灯りで撮影しても色の問題は起きづらくなるということです。

Web会議などでも、オッサンの顔の見栄えに意味があるかはさておき、血色が悪く見えるのは低減されるでしょう。

というのは言い訳で、単にやってみたい。

部屋全体を高演色にするのは、基本的に業務用途ですから、一般家庭でやるようなことではありません。だからこそ、夢が膨らみます。

当初は、いまどきはLEDだろう、撮影用には高演色タイプのLEDがあるし、などと気軽に考えていたのですが、照明となるとどうにもうまくありません。

いろいろ考えてみました。

案1

筆者の仕事部屋の照明は、天井に直接取り付けるシーリングライト。丸型の蛍光灯を2本使ったものです。丸型蛍光灯の演色性はRa84といったところですが、それ以上の高演色なタイプは見つけられませんでした。そのままつけられるLEDもあるのですが、演色性は変わらないか、落ちてしまいます

案2

シーリングライトを変えて、LEDにしようかとも考えたのですが、Ra90くらいが多いようです。悪くはありませんが、せっかくなのでもう一声といったところです。LEDライト部分の交換も難しいようで、しかもLEDは長寿命ですから、今後手を入れる余地がなくなってしまいます。

案3-1

「LED 高演色」でググって出てくるのが、エコリカの高演色タイプのLEDです。互換インクのメーカーのエコリカです。直管型(棒状のやつ)の蛍光灯と同サイズです。

色評価用高演色LEDとのことでRa97、R9~R15も90以上をうたっています。これだー! っと思ったのですが片側給電なため、普通の直管蛍光灯用の器具で使うには要改造です。配線図を見るに簡単な作業に見えますが、電気工事士の資格が必要です。

案3-2

エコリカの直管LEDを使う方法としては、ダクトレール用の片側給電LED用のソケットを使うという手もあるようです。カメダデンキがRAIL SOCKETです

1本だけでなく2本つけられるものもあります。四畳半の部屋なら光量としては40W形2本で十分でしょう。シーリングライトの取り付け金具を使って、ダクトレールにする簡易的なものもあります。40W形直管蛍光灯の長さは約1.2mなので、1.5mある東芝のIPH-8150のような製品ならつけられそうです。

ただし、四畳半の正方形の部屋に長いライトを入れると明るさが偏りそうです。工事してダクトレールを2本つけるか? とも思ったのですが、さすがに工事してもらうために部屋の荷物をどうにかするのは面倒すぎます。

案4

白熱灯は演色性はいいのですが、色温度が低すぎ赤すぎます。仕事という雰囲気ではなくなりますし、消費電力も大きく、発熱も大きいですし、今さらという気もします。

いずれも却下です。

計測結果はいいが写りの変化は感じられず

カラーメーターの計測結果に舞い上がってしまった勢いで、テスト撮影もしてみました。カラーチャートと、最近100円ショップで買った色鉛筆、それに左手を入れてみます。光の辺り具合を統一していないので厳密な比較とはいいがたいものです。RAWで撮影し、チャート部分の明るさとホワイトバランスを揃えています。

ただし、光の当たり方の都合もあるのでしょうが、左手や色鉛筆を写したところは、普通の蛍光灯と比べて違いは感じられませんでした。ざんねん。

色がマスで区切られたチャートを見ればたしかに色の再現が異なりました。特に赤(下から2段目、左から3番目)の差は小さくありません。

一方、色鉛筆や手は普通の蛍光灯と比べても、差は分かりませんでした。白熱灯はもちろんのこと、光の当たり方がよかったのか台所に使っているLEDライトの方が良さそうに見えるくらいでした。私の手にもう少し赤味があれば違いが出たのかもしれませんが、いずれもRa80以上の照明ですので、そもそもそうは悪くはなかったのかもしれません。

今回、仕事部屋の照明を高演色にしてみましたが、そのハードルは低いものではありませんでした。個人的には、撮影用に高演色LEDが増えてきていたので、LEDのシーリングライトで高演色なものを見つけられなかったのは意外でした。日常生活で問題ないのは分かりますが、選択肢として存在して欲しかったと思えます。

ただ、自分でもバカなことやっているなと思いつつも、達成感はあります。気のせいかもしれませんが、部屋の中の黄色や赤いものが自然に見えます。なんだか気分もちょっと良くなってきました。

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September 09, 2020 at 06:30AM
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