吉川喬
【岡山】岡山市消防局が、火災現場をVR(バーチャルリアリティー、仮想現実)で市民に疑似体験してもらう取り組みを本格的に始める。中消防署であった職員説明会に立ち会い、「現場」を体験させてもらった。
専用ゴーグルで、同消防局が撮影した周囲360度のVR動画を視聴する。動画は2種類。1本は、民家でロウソクが倒れ出火したという想定の現場だ。
部屋の奥から火が上がり、ハンガーにかけられた衣類に燃え移った。火災報知機の音が響くなか、「パチパチ」と不気味な音が鳴る。火柱はわずか1分ほどで天井に到達。衣類が落ち、舞い上がる火の粉がさらに火の手を広げる。一面が火の海になるまで瞬く間。手に汗がにじみ、後ずさりしそうになった。
もう1本は、コンロで熱し続けた天ぷら油の場面。白煙が上がる鍋から、突然火があがった。動転して消そうとしたのか、水をかけると、巨大な火柱が上がり、視界がオレンジ色に染まった。絶句した。
VR動画は、言葉だけでは伝えきれない火災現場のリアルを体験してもらい、防災意識の向上につなげようという狙いだ。
記者も、油の火には必ず消火器を使うことなどを改めて確認できた。さらに、避難のために階段には物を置かない▽住宅用消火器を購入しておく――などの備えの大切さを痛感。「自分は火災に巻き込まれない」とは間違っても思わないよう自戒した。
市消防局はゴーグル5台を用意し、予約受け付けを開始。6日からこれらの無料VR体験を始める。町内会や学校での訓練などを想定しており、最寄りの消防署や出張所などが窓口となる。同局は、都市部以外の人や高齢者にも幅広く体験してほしいと、職員がゴーグルなどを持参する出張スタイルを採用したという。
市消防局はほかにも岡山大などと共同でVRを使った研究を進めている。CG空間で煙が充満する現場をVR体験してもらい、見た人がどんな行動をとるのかといったデータを集めるなどして、避難意識の向上に役立てたいという。(吉川喬)
からの記事と詳細 ( 部屋は瞬く間に火の海に…VRで知る火災のリアル - 朝日新聞デジタル )
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