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Sunday, August 28, 2022

映画『彼女のいない部屋』公開。俳優であり監督のマチュー・アマルリックに直撃──連載:魚住桜子のパリ・映画だより 第10回 - GQ JAPAN

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毎朝、俳優やスタッフに配っていたプリント。シナリオを解体して、よりわかりやすいように伝えていた。

アマルリックの到達した新たな表現

本作は幾層にも重なり合う視聴覚とモンタージュで、あらゆる解釈ができそうだ。自分がいなくなることによって、彼女は家族の未来を操ることができるのだろうか?

彼女のロードムービーが幕を閉じると、じわじわと深い感情が呼び覚まされ胸が締めつけられた。そのことを伝えると、アマルリックは答えた。

「おそらく(彼女の)幻想と妄想は終わって、観客の前からさっと立ち去っていくからでしょう。そして不意に物語は打ち切られてしまう。観客だって“希望”を持ち続けたいのです。恋愛の終わりでも、不意の別れを消化できずにいることがある。『まだ彼は私を愛しているはずだ。彼自身、その感情に気づいていないだけで、別の人に目移りしたのは、彼女が私に似ていたからだ』と思い込みたいことがある。受け入れることは困難を極める。僕はこの映画を作りながら、日本映画に想いを馳せていたのです」

死者の魂が見事に描かれている点では河瀨直美監督の作品を、現実と幻想が同じようにリアルに描かれている点では、黒沢清監督や諏訪敦彦監督の映画にインスピレーションを得たという。

アマルリックは『さすらいの女神たち』(10)では旅芸人のロードムービーを悲喜こもごもに描き、『バルバラ セーヌの黒いバラ』(17)では虚実を織り交ぜながら、めくるめく世界をみせた。そこには「亡霊/幻影」というモチーフが共通する、と思う。

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