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Thursday, February 20, 2020

ゴーストキッチン : 投資家や起業家が注目する、レストランの「新形態」とは? - DIGIDAY[日本版]

レストラン業の新しい形態が業界に広がりつつある。それは、レストランのメニューをオンラインで注文できる「シームレス(Seamless)」のようなサービスを介した、ミステリアスな雰囲気を帯びたものだ。この形態を取る事業者は、賃貸料を削減し、労働力をアウトソース化することで、さまざまな必要経費を抑え、利益率を上げている。

この形態のセールスポイントは次のようになる。多くの人々、特に都市生活者たちは、お気に入りのレストランからデリバリーを頻繁に取っている。全国レストラン協会(National Restaurant Association)が発表したレポートのひとつによると、消費者のレストラン利用の60%は、レストラン敷地の外で行われている。つまり、デリバリーやテイクアウト、ドライブスルーといった環境で食べ物が消費者に渡っているということだ。そして、投資家たちは新しいタイプのフードビジネスの展望に関する、このデータによだれを垂らしている。そこに付けられた名前が「ゴーストキッチン(ghost kitchens)」だ。使われていない安いスペースを借りて調理用スペースとし、テーブルもウェイターといった接客・給仕スタッフも用意しない。ただ、キッチンが大量に存在するだけだ。そこでデジタル上の注文を受け、調理をして配達用の使い捨て容器に入れ、配達業者がこの注文を配達する、といった具合である。

ウーバーのファウンダーも注目

ゴーストキッチンはレストランの利益率を高めるための新しいモデルとして称賛されている。ウーバー(Uber)のファウンダーであるトラヴィス・カラニック氏は彼の新しいビジネス、クラウドキッチンズ(CloudKitchens)で料理ビジネスをひっくり返そうと企んでいる。

彼のビジネスであったウーバーは、表向きに従業員の責任を外部化することで、タクシー経済を再定義してしまった。クラウドキッチンズは大都市の近くにある低価格の物件を見つけ、調理スペースを作り、それを賃貸する。カラニック氏は多くの情報を疲労してくれなかったが、クラウドキッチンズはベンチャーキャピタルで4億ドル(約440億円)を調達していると報じられている。

レストラン業界の再開発にビジネスの好機を見つけている起業家はカラニック氏以外にもいる。キッチン・ユナイテッド(Kitchen United)、リーフ・テクノロジーズ(Reef Technologies)、ズール・キッチンズ(Zuul Kitchens)が名を連ねる。デリバリー限定のビジネスのためのキッチンスペース構築というコンセプトは、どのビジネスプランにも含まれている一方で、ビジネスモデルの詳細は少し異なっている。クラウドキッチンズの場合、彼ら自身のレストランもデリバリーアプリを通じて限定販売をするようだ。ズールはすでに有名なスウィートグリーン(Sweetgreen)のようなファストカジュアルレストランに対応することでコストを低く抑えながらも成長を狙っている。

ゴーストキッチン現象の特徴

ズールの共同ファウンダーでありCEOのコーリー・マニコーン氏によると、物件のコストが都市部レストランの最大の問題だ。「ニューヨーク市に15件の実店舗をオープンできる時代は終わった」と、彼は言う。「マーケットの未来は、ひとつかふたつのフラグシップとなるだろう」。彼のビジネス理論はデータに基づいている。ファストカジュアル(ファストフードとファミリーレストランの中間の新業態)、クイックサービスのレストランではデリバリーサービスが収益の半分にも上ると、彼は言う。「レストラン生態系において、デリバリーが非常に巨大な構成要素なる兆候が現れている」。

マニコーン氏の過去のビジネス歴を見れば、現在の彼の野心が見てとれる。米・レストランチェーンであるアイホップ(IHOP)で出世をした彼の父親は、最終的には自身でフランチャイズを経営した。その後、彼は自分自身のバー・レストランをオープンすることを決意するが、これはマニコーン氏が大学生だったときに成功せず閉鎖した。「自分でレストランで食事をする以上のことは、レストラン(業界に)関わらないと、そのとき自分に告げた」と、彼は言う。彼の父親のビジネスが失敗した原因はシンプルだ。レストラン経営は非常にお金がかかる。賃料が高く、プロダクトの利益率は低く、労働力が大量に必要となる。数字は地域、コスト、需要によって変わるものの、ほとんどのレストランは1桁の、それも下から中くらいのあたりの利益率となっている。

ゴーストキッチン現象に集まるファウンダーたちや投資家たちは、ただ消費者のダイニングサービスにおける需要が成長しているところに集まっているだけだと主張する。しかし、この現象にはもうひとつ重要な要素がある。それは労働力だ。自らの敷地の外でのみ顧客へプロダクトを提供するフードビジネスは、ウェイターやバーテンダーといった従業員たちに頼る必要がない。「基本的には食材の準備、そして副料理長と料理長が必要なだけだ」と、カリフォルニア大学サンタクルズ校社会学教授のクリス・ベナー氏は言う。

そのため、ゴーストキッチンズのビジネスモデルは高賃金の仕事は外部化する一方で、低賃金の仕事に偏って依存する形になる。「我々の経済においてフード業界こそが圧倒的多数の低賃金の仕事が存在する場所である」と、ベナー氏は言う。彼の観点からすると、「レストラン業において生活賃金が稼げる仕事は、客に面した部分とバーテンダー職のみ」となる。ゴーストキッチンの枠組みではシェフたちが唯一の、低賃金ではない仕事となるだろう。

直面している「機会」と「課題」

ゴーストキッチンの仕組みの重要な側面が、需要だ。フードデリバリーは爆発的な成長の直前状態にあるとアナリストたちは考える。L.E.K.コンサルティング(L.E.K. Consulting)はレストランのデリバリー売り上げは次の3年で敷地における売り上げと比べて300%早く成長すると予測している。この転換はまだ完全には現実とはなっておらず、また多くのアナリストたちは都市部やある種のレストラン業を過剰に強調する可能性はある。「ほとんどのレストランにとって、デリバリー部門は収益全体の一桁だ」と、ベナー氏は言う。

ブランド認知も重要なままだ。「調理された料理を自宅へ届けるデリバリーの大部分は顧客がすでに知っているレストランからとなっている」と、彼は説明する。新しいレストランが隠れたスペースからマーケティングのみで認知されていくというゴーストキッチンのようなビジネスは、一度も訪問したことがない店からも注文できるほどの気軽さを消費者が持っていることに賭けている。

このトレンドはまだ初期段階だが、変化は起きている。マニコーン氏にとって、ズールは彼の父親のレストランビジネスの失敗を遠回りな方法で正しているのかもしれない。競争が激しく、利益率が低いビジネスで父親は成功できなかった。そして、彼が別の参入方法を見つけた。マニコーン氏自身はあまり深く哲学的にはならない。「私とズールは、お金があるところに行こうとしているだけだ」という。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:塚本 紺)

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