かつて「伝説の人斬り」と呼ばれ、今は全国をさすらう流浪人(るろうに)となった男・緋村剣心。外見は少年のような優男だが、中身は癒えない過去を背負い、今なお罪の意識に苛まれる侍。彼の「闘いの人生」を描いた本作は、瞬く間にファンを獲得し、アニメ化やゲーム化、舞台化され知らぬ者のいない一大コンテンツへと成長を遂げた。
そして2012年。新たな“伝説”が幕を開けた。NHK大河ドラマ『龍馬伝』の大友啓史監督と俳優・佐藤健さんが組み実写映画化。第1作が興行収入30億円超えの大ヒットを記録し、シリーズ化と相成った。
その壮大な旅が、2021年に完結する。『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』の2部作が、それぞれ4月23日(金)・6月4日(金)に公開される。日本映画史上、名実ともに最大級のヒットシリーズの“終わり”へ──。このメモリアルなタイミングで、原作者の和月さんへの単独インタビューが実現。約1時間にわたり、原作の制作秘話から実写映画の魅力、さらには少年漫画全体の話まで、KAI-YOUならではのどコアな要素もふんだんに盛り込んだ濃密なトークが展開した。
間違いなく永久保存版の超ロングインタビュー、どうか隅々まで楽しんでいただきたい。そして読み終えた暁には、「とりあえず、お疲れ様。」との言葉を贈ろう──。
取材・文:SYO 編集:小林優介
目次
原作者から見る実写『るろ剣』の凄さ
──これまでの『るろうに剣心』実写映画シリーズで、和月さんが「よくこの要素を実写に落とし込んだな」と驚いたポイントはどこでしょう?和月 やっぱり、アクションシーンですね。これまでも漫画原作の実写作品はありましたが、ここまで正しく原作を読み込んだうえでアクションシーンを仕込んでくれた作品は初めて見ました。
「九頭龍閃!(くずりゅうせん)」と技名を叫ぶことはないのですが、剣戟(けんげき)の中にしっかりと原作の技を入れてくれているんですよね。少年漫画としてのケレン味と同時に、アクション映画としての魅力を追求しているのがすごい。これは大友啓史監督やアクション監督の谷垣健治さんの演出力、そして佐藤健さんをはじめとする演者さんの超人的な身体能力があってこそだと思います。
あと、漫画を実写化する際に、どこまで2次元を現実に寄せていくのかというさじ加減の難しさがありますよね。このシリーズは、画づくりも含めてそこが非常に上手い。
和月 見ているだけで「これは(現実の)明治だけど『るろうに剣心』の世界でもある」とわかるんです。突拍子ないものになっていないんだけど、暗いライティングにもなっておらず、ちゃんと少年漫画の世界観に映えるように設計されている。これは聞いた話なのですが、剣心の赤い着物についても、何着もパターンを用意してどの程度の赤が良いのか検討し、カメラテストを重ねて実写の中に映える赤を選んだそうなんです。ただ綺麗な赤を選ぶのではなく、作品世界に合ったものを追求してくれたと聞いて、本当に細部までこだわってくれているんだと感じました。
世界観とアクションをそのまま映画に持ち込むのではなく、どう変換したら実写に沿うのかを考えているところが素晴らしいです。
──2作目『京都大火編』での新月村の百人斬りシーン、3作目『伝説の最期編』における軍艦・煉獄での船上バトル、4月23日公開の『最終章 The Final』での高低差アクション等々、毎度驚きのアクションシーンがありますが、和月さんのお気に入りはありますか?
和月 すごく度肝を抜かれたのは、佐藤健さんの三角跳びといいますか、壁をズダダッと走るシーンです。第1作での練習風景を映像で見せていただいた際、本当に佐藤さんご自身がやっているのを見て「壁を走る人を初めて見た!」とびっくりしましたね(笑)。あれはすごく印象に残っています。
剣心役に佐藤健を推したのは和月伸宏だった
──佐藤健さんを剣心役に推したのは和月さんだとうかがいました。和月 もともと佐藤健さんが主演された『仮面ライダー電王』を見ていて、妻と「若いのに演技もうまいし体も動くしすごいね」と話していたんです。
その後、映画の打ち合わせの際にプロデューサーさんから「叶うかどうかはわかりませんが、原作者サイドで『この方』というご希望はありますか?」と言っていただけて、「佐藤健さん」と答えたんです。
そうしたら、プロデューサーさんも驚いて「実は佐藤健さんにオファーしたいと思っていたんです」と。そこで合致して、うまくいったという形です。佐藤さんは演技のうまさ、身体能力の高さ、マスクの良さはもちろんなのですが、役に対する“真摯さ”が尋常じゃないですね。
何回か撮影中に陣中見舞いにうかがったのですが、役に入っているときは近寄れないです。かといって人をまったく寄せ付けないわけでもなく、しっかり対応もしてくれる。「スターだな、生きる世界が違うなぁ」というのが本音です。
──大友啓史監督について、『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』はともに、原作への理解度が驚異的だと思います。それでいて実写版ならではの解釈を加えていましたが、原作者の立場から見ていかがですか?和月 僕が特にうまいなと感じたのは、説明の省略ですね。原作は少年漫画ということもあり、やはり年齢層に合わせて「これはわからないかな?」という部分は心情セリフを並べてわかりやすくしようとしていたんです。
ところが、実写映画に関してはそこを潔く省いている。テンポ感や尺を意識しつつ、冗長になって情緒がなくなってしまうことのないようにすごく計算されていて、取捨選択をしているところがうまいなと。これがあるから「少年漫画の実写化」という範疇に収まらない作品になったんでしょうね。
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