リアル脱出ゲームの企画や運営を行うSCRAPが、新たなコンテンツの制作にチャレンジしている。それは、PCやスマホなどの端末からWebにアクセスすることで、自宅に居ながらリアル脱出ゲームの興奮や謎を解いたときの達成感を味わえる、オンラインリアル脱出ゲームだ。2020年からオンラインの制作がスタートし、すでに20万人以上が参加しているという。
これまで数々のオンラインリアル脱出ゲームが開催される中で、SCRAPが初めてサスペンスノベルに挑戦した意欲作が、2022年2月17日より配信がスタートした『HOTELブルーローズの99の部屋』である。
物語の舞台は、シカゴ万博博覧会に沸いた1893年のアメリカ・シカゴ。この街の一角に、“願いを叶えることができる”と噂されるホテルが存在した。その名は“HOTEL ブルーローズ”。99の部屋を有する、美しい青色で彩られたホテルだ。
この “HOTEL ブルーローズ”で巻き起こる、不思議な出来事の真相を解明するのが、プレイヤーの目的。ストーリーは事件を追いかける探偵ウィリアムと各エピソードの主人公(5人)を軸に展開され、99の部屋を探索しながらテキストを読んだり謎を解いたりすると、各エピソードが進行。衝撃的な結末が明かされる仕組みになっている。
本稿では、アドベンチャーゲーム好きのジャイアント黒田によるプレイレビューを、ネタバレありで公開。といっても、謎解きの答えや各エピソードのオチ、結末については触れていないので、これから本作をプレイする方もご安心を。本作は、ノベルゲームが好きな方はもちろん、SCRAPならではの謎解き要素も満載で、リアル脱出ゲームファンも必見の内容となっている。興味のある方はぜひチェックしてほしい。
※ネタバレなしレビューはこちら
SCRAPが手掛ける新作にノベルゲームの新たな可能性を見た!
SCRAPのリアル脱出ゲームを何度か体験していたし、オンラインリアル脱出ゲームの『封鎖された人狼村からの脱出』もプレイしていた筆者は、『HOTELブルーローズの99の部屋』の配信を心待ちにしていたひとり。あのSCRAPが初めてサスペンスノベルにチャレンジするということで、どのような仕上がりになるのかワクワクしていた。
結論から言うと、収録された5つのエピソードを並行して進めると衝撃的な結末が明かされるストーリーや展開、合間に発生する謎解きのクオリティーは期待以上のデキ。一部フラグの管理が甘く、ゲームファンの視点で見ると惜しいと感じるところも正直あったものの、謎解きやストーリーはアドベンチャーゲームが好きな方も存分に楽しめるだろう。
まず、ストーリーについて。単なる1本道ではなく、収録された5つのエピソードを並行して進める構成が意欲的でおもしろい。最初に進められるのは、青年記者のタビーとダンサーを夢見る少女パンジーのエピソード。ふたりのエピソードを進めていくと、入手した情報から、ほかの主人公たちのエピソードも進められるようになる。
各ストーリーは独立しているうえ、ちゃんと完結するので単体でも楽しめるが、複数の主人公の視点からストーリーを描くことによって、“HOTEL ブルーローズ”で巻き起こる、一連の事件がよりいっそう謎めいたものに感じられる展開になっている。さらに、とあるエピソードに登場したキャラクターが別のエピソードにも関わっているなど、裏ではこのようなつながりがあったのか、と驚きも大きかった。
5人の主人公たちが“HOTEL ブルーローズ”を訪れた理由もバラエティー豊か。タビーは未亡人失踪のスクープを求めて、パンジーは双子の姉を探しに、ミエール神父は悪霊を退治するために、サヨは夫の浮気を調査するために、リリーは伝説のマジックを手にするためにと、いずれも興味をそそられる理由になっている。
また、バラエティー豊かな理由は、ストーリーに厚みを持たせるのにも一役買っていた。本作では、行方不明者を探すミステリーチックなものから、ホテルに潜む悪霊を退治するホラーテイストなものまで、異なるテイストのシナリオが堪能できる。これは謎解きにも当てはまる。マジシャンのリリーを登場させることで、マジックに関する謎を解く仕掛けも用意されており、謎解きのジャンルの幅も広がっていた。
主人公たちは各エピソードでプレイヤーの分身となるので自然と愛着も湧くのだが、感情移入をしすぎるのはちょっと危険かも……。たとえば、タビーはスクープを追い求める好奇心が、リリーは伝説のマジックを手に入れてショーを成功させるというエゴがそれぞれ強すぎたために、災いが降り掛かってしまうのだ。主人公なのに、まさかあんなことになるなんて、とオチには驚いた。この衝撃は、ぜひ本作をプレイして味わってほしい。
また、本作はホテル内の探索方法もユニーク。マップから部屋を選ぶか、部屋の名前を直接入力すると、その部屋に移動して探索できるのだが、この後者の方法が謎解きとマッチしていて感心した。
たとえば、サヨのエピソードでは、夫の浮気の調査をするために、とある部屋を訪れることになる。この部屋は場所こそ分からないものの、文章から部屋の名前が判明し、入力することで辿りつけるのだ。
文章やオブジェクトに隠された部屋名を入力して移動できるのは、探索意欲も大いに刺激された。新たな部屋の名前を探すのが自然と楽しくなったし、発見する興奮や苦労があったからこそ、部屋を訪れる喜びが増したと感じた。移動方法にひと工夫することで、こういった興奮や喜びが味わえるうえ、自由度の高い謎解きが楽しめるのも本作の大きな魅力だ。
探索意欲を高めてくれた要因はほかにもある。ホテル内には仕掛けや隠し通路などが満載で、部屋を訪れるたびに新たな発見があった。これらの仕掛けや隠し通路はストーリー終盤の謎を解く鍵にもなっており、答えを閃いたときは、さすがSCRAPだなと舌を巻いた。とくに筆者のように館モノのミステリーの雰囲気がお好きな方は、楽しんでもらえると思う。
筆者が体験したリアル脱出ゲームや、オンラインリアル脱出ゲームの『封鎖された人狼村からの脱出』と比べると、謎解き要素が控えめに感じたのもポイントだ。これはおそらく、ノベルゲームという性質上、シナリオを読むのに時間がかかることを考慮して、全体のプレイ時間を抑えるための配慮だろう。クリアーまでの想定所要時間は、4~5時間と設定されている。
もちろん、控えめと言っても謎のクオリティーは高いのでご安心を。先ほど、リリーのマジックの謎解きを例に挙げたが、謎がリンクする仕掛けも満載で、謎を解明したときの達成感や驚きはひとしお。SCRAPのリアル脱出ゲームが好きな方も、満足できる内容になっていると思う。また、チケットを人数分購入すれば、複数人で楽しむことも可能(推奨プレイ人数は1~3人)。初めてリアル脱出ゲームやサスペンスノベルを遊ぶ人でも、楽しみやすい作りになっていると感じた。
全体的な完成度は概ね満足した一方で、気になったのがノベルゲームとしての作り込みだ。先ほど一部のフラグ管理が甘いと指摘したが、とあるエピソードを進めているとき、室内を探索したり新たな部屋に移動したりすると、突然、別の主人公のエピソードが始まって戸惑うことも。イベントやフラグが部屋ごとに管理されているせいか、とある部屋では過去に発生した出来事が表示され続けているなど、もったいないと感じた。
気になる点はあるものの、ノベルゲームと謎解きを巧みに融合させたゲームシステムや、プレイヤーを最後まで飽きさせないストーリー構成と展開など、本作でしか味わえない感動が多いのも事実。真実に近づいてこれで終わりかと思いきや、最後に新たな謎が用意されているのも、SCRAPらしい大掛かりな仕掛けだ。
さらに、すべての謎を解明したとき、考えさせられるような問いかけも用意されているのも印象的だった。夢が叶うと噂される“HOTEL ブルーローズ”で、どのようなことが起こったのか。ぜひその身で体験して、喜び、驚き、悲しみ、恐れといったあらゆる感情を味わい尽くしてほしい。
ゲーム概要
料金
- 一般チケット:通常価格2800円[税込]
- 特典付きチケット:通常価格3000円[税込]
※一般チケットを購入すると、購入直後にゲームページのURLがメールで届き、その後はすぐにプレイできる。
※特典付きチケットを購入すると、特典として“ブルーローズに宿泊したある人物のストーリーを覗き見ることができるメンバーズカード”、“ゲームプレイ時の情報整理に便利なホテルの地図”がついてくる。
販売場所
- 一般チケット:スクラップチケット
- 特典付きチケット:SCRAP GOODS SHOP(EC)/店頭(東京ミステリーサーカス、およびリアル脱出ゲーム常設店)
※SCRAP GOODS SHOP(EC)での購入には、別途送料が必要になる。
プレイ形式
- 制限時間:なし(想定所要時間:4〜5時間)
- 人数制限:なし(推奨プレイ人数:1~3人)
- 必要なもの:スマホ/タブレット/PCなどの端末いずれかひとつ
からの記事と詳細 ( SCRAPの意欲作『HOTELブルーローズの99の部屋』レビュー。オンラインで楽しむサスペンスアドベンチャーは、ゲームファンも脱出ゲームファンもうなる一作【ネタバレあり】 - ファミ通.com )
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