大相撲の雷(いかずち)親方(44=元小結垣添)が1日、入間川部屋を継承し、部屋の名称を「雷部屋」に変更して、師匠としての新生活をスタートさせた。この日朝、さいたま市の部屋に届いたばかりの看板の前で、力士や世話人、行司、床山らと記念撮影し、報道陣の取材に対応。「もう1回、初心に戻って、いい部屋にしていきたい。(師匠が)自分に替わってから、ダメになったと言われないようにしたい」と、引き締まった表情で話した。1961年(昭36)7月場所以来、62年ぶりに復活した雷部屋で、現在は全員幕下以下の7人の力士を指導していく。
1月末まで師匠を務めていた入間川親方(元関脇栃司)が、4月に65歳の定年を迎えるため、部屋付きだった雷親方が、入間川部屋の部屋も、そのまま引き継いだ。部屋の看板は行司の木村庄太郎の文字で、新生雷部屋の初稽古は「ちょっと時間は遅いですけど、看板を付けてからと思って」と、報道陣の取材に対応した後、この日午前10時30分過ぎから始まった。
雷親方は現役時代、日体大から武蔵川部屋に進んだ。兄弟子に横綱武蔵丸、いずれも大関の武双山、雅山、出島らがいた。部屋持ち親方になる兄弟子も多く、師匠になることは「あこがれ、夢だった」という。ただ「(正式に継承する1日に)日付が変わったら、急に不安になってきた」とも漏らした。それでも「一生懸命突き進んでいくしかない」と、自分に言い聞かせた。
そんな新米師匠に、早くも力強い援軍が現れた。日体大で同期、同じ武蔵川部屋に進んだ元前頭剣武で、現在は埼玉県の秩父地方を中心に、複数の旅館を営む宮本荘グループ社長の宮本一輝さんが、部屋関係者以外では唯一、門出の日に立ち会った。差し入れの肉20キロ持参で、約1時間半かけて車で駆けつけた宮本さんは「800坪の敷地を使って、合宿できる施設を建設中です。屋内に土俵や観覧席、屋外には駐車場もつくります」と、秩父地方の町おこしを兼ねて、来年から毎年、雷部屋を合宿に誘致する計画だという。
部屋持ち親方になるに際して、雷親方が現役時代の師匠だった、先代武蔵川親方で元横綱三重ノ海の石山五郎さんからは「スカウトもあるし、弟子も育てないといけないけど、自分で決めたからには頑張れ」と、激励されたという。この日の記念撮影には体調不良で1人が参加できなかったが、力士7人、世話人、行司、床山、部屋付きとなった入間川親方と自身という総勢12人の雷部屋。女子相撲で世界選手権にも出場した、雷親方の栄美夫人との長男玄空くんは、中学3年で178センチ、75キロで、高校から相撲を始めると決意したという。「力士たちを今まで以上の番付に上げて、立派な社会人として通用するように育てていきたい」。取材開始間もなくは口にしていた不安も消えたように、雷親方は晴れやかな表情で話していた。
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