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Tuesday, December 29, 2020

コロナに揺れた大相撲 にわかに信じがたい部屋消滅の情報、その裏にあったもの - スポニチアネックス Sponichi Annex

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大相撲の中川部屋消滅を報じる7月11日付スポニチ東京最終版
Photo By スポニチ

 【紙面ニュースで振り返る2020】大相撲の中川部屋が、師匠のパワハラで閉鎖になるらしい――。コロナ禍で初の東京開催となった7月場所が、始まる前のこと。関係者から、にわかには信じがたい情報がもたらされた。

 17年に起きた元横綱・日馬富士による暴行騒動などを受け、日本相撲協会は暴力禁止規定を定め、またコンプライアンス委員会を設置するなどして再発防止に力を注いでいた。そうした努力を、現役力士や若い親方の手本となるべきベテラン親方が、簡単に無にするとは思えなかった。

 当時、新型コロナウイルスの感染予防のため、個別の対面取材は認められていなかった。師匠の中川親方(元幕内・旭里)や力士へのアプローチができない中で“裏取り”には苦労した。だが、取材を進めていくうちに状況が見えてきた。中川親方からパワハラを受けた弟子が、その音声データを持って協会に告発したという。既にコンプライアンス委員会が調査を行い、理事会で処分を決定する見通しであることも分かった。

 背景には中川親方が旧春日山部屋を引き継ぐ形で部屋を興したことも影響していたようだ。

 その後、全く別ルートからも同じ話が飛び込んできたため情報が広がり始めていることを確信。すぐに記事化することを決めた。ただ、同部屋を直接取材できないこともあって、具体的な師匠の行為や暴言の内容はつかみ切れなかった。

 ならば「不適切指導」と「部屋消滅」をメイン見出しにして、紙面を作ろう。そう方針を固め、作業にとりかかったのが7月10日の昼すぎ。そのタイミングで、同部屋でちょうど荷物が運び出されているとの情報を入手。すぐに川崎市の同部屋にカメラマンを派遣した。協会のコロナ対策の指針を守り、力士らへの声掛けは控え、遠目からの撮影となったものの、決定的な場面を押さえることができた。

 あとは(11日の)紙面の出来上がりを待つだけという状況だった。ところが10日午後11時頃に、一般紙の1社が、同社のインターネットサイトに中川部屋問題の速報をアップした。他社がまだ後追い取材ができる時間帯である。翌日の紙面は他紙と同着になる可能性が高かった。それでも、同社は速報を優先させた。その判断理由を知るよしもなかったが、すぐにわれわれも対応した。2社が速報を出したことで他のメディアも動く。翌朝、各社の紙面に中川部屋の記事が掲載された。10日の昼間の段階で想定していたスクープは幻になった。ただ、力士が荷物を運ぶ写真を掲載していたのはスポニチだけだった。

 その後、田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)が、不要不急の外出自粛を求められていた7月場所前に、飲食店で寝ている写真がネットで拡散される出来事があった。その問題で協会から本場所中に厳重注意を受けたことが独自で分かったときは、速報をスポニチアネックスに出した。

 最近はどこの新聞社も、紙面より先にニュース記事をネット速報の形で出す傾向が強くなっている。それが1社単独のネタだったとしても、内容によってはネットを優先する流れだ。ネット時代の変化は速い。そのスピードに柔軟に対応していかないと、すぐに足もとをすくわれてしまう。(特別取材版)

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