2021年12月3日 12:00
ありふれた家事労働の描写を通して、インドのミドルクラスを中心に根強く残る家父長制とミソジニー(女性嫌悪)を鋭く描いた「The Great Indian Kitchen(原題)」が、「グレート・インディアン・キッチン」の邦題で、2022年1月21日から劇場公開されることが決定。あわせて、ポスタービジュアルも披露された。
2021年1月、コロナ禍のインドにおいて、1本の映画が無名の配信サービスによってひっそりとオンライン封切りされた。その作品が「グレート・インディアン・キッチン」だ。同作は、インドの南西の端にあるケーララ州の公用語マラヤーラム語で作られ、当初観客として見込まれていたのは、そのマラヤーラム語話者の約3480万人。13.8億のインド総人口の3%以下である。
本作では、教育を受けた若い女性が、家父長制とミソジニーに直面して味わうフラストレーションをドキュメンタリー的タッチで描いている。ケーララ州北部のカリカットの町で、高位カーストの男女がお見合いで結婚する。夫は由緒ある家柄の出で、伝統的な邸宅に暮らしている。中東育ちでモダンな生活様式に馴染んだ妻は、夫とその両親とが同居する婚家に入るが、台所と寝室で男たちに奉仕するだけの生活に疑問を持ち始める。グルメ番組のように始まり、やがて家族制度の暗部に切り込んでいく“ホームドラマ”だ。
登場人物も舞台となる場所も限られた“ミニマリズム的な作品”だったため、オンライン封切りでは、宣伝らしい宣伝も行われなかった。しかし、公開後間もなく、主に女性の観客の間で大評判に。ほどなく彼女たちは自主的に宣伝活動を始め、アクセス集中のため弱小配信サイトのサーバが数日間ダウンするほどの事態となった。クチコミによる大ヒットによって、大手であるインド・アマゾンのプライムビデオによる配信も2カ月後にスタート。英語字幕の力によって、インドのさらに多くの観客の間にも共感の輪が広がり、上海国際映画祭をはじめとする国内外の映画祭への出品にもつながっていった。
日本では、東京・大阪ほかでSPACEBOXが主催・開催した「インディアンムービーウィーク2021」のパート1(6月)とパート2(9月)での上映され、男女の観客から圧倒的な支持を得た。また、9月に「FRaU」誌オンライン版で紹介された際には、普段インド映画に触れていない読者層にも幅広くリーチ。「どこでどうやったら観られるのか」という声が多く上げられた。
マイナー配信サイトから大手サイト、そして世界の映画祭へ。数奇な道筋をたどったウィズコロナ時代の特異なヒット作は、日本で世界初の劇場一般公開となる。
「グレート・インディアン・キッチン」は、22年1月21日から新宿ピカデリーほか全国順次公開。
(映画.com速報)
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