- 「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2021<総評レポート>」の主なポイント
居住満足度を市区町村別に集計すると、交通利便性や生活利便性などの因子が街への評価につながるのに対し、個々人が感じている主観的幸福度においては、そうした地域特性よりも、個人属性や自己認知に関する要素の影響が比較的大きいことが分かりました。例えば、女性であること、結婚、労働時間、通勤時間、未来への展望、家族関係などの要素が、幸福度を押し上げるポイントとなっています。
2.住み続けたい気持ちは、街への愛着・誇りがあり、60歳以上・持ち家・地元出身だと強い
住み続けたい気持ちの構造を分析した結果、街への愛着・街への誇りを持ち、60歳以上・持ち家・地元出身の場合に住み続けたい気持ちが強くなる傾向が明らかになりました。
地元出身の場合、友人や知り合いが多くなり、友人や知り合いが多いことが、誇り、愛着、貢献、地域の繋がりにプラスに働き、最終的に住み続けたい気持ちにつながるという構造が明らかになりました。このことから、住み続けたい気持ちを高める上では、地元出身でない人に、いかに友人・知り合いを増やしてもらうかがポイントとなる可能性が示唆されました。
3.地方では大型ショッピングセンターがあると生活利便性が向上
2万4千㎡以上のショッピングセンター(全国のイオンモールが含まれる)がある街では、ショッピングセンターがない街に比べて市区町村単位の生活利便性が高いことが分かりました。
また、ショッピングセンターのある街の人口増加率は、ショッピングセンターがない街よりも高くなっています。
- 主観的幸福度と居住満足度・街への誇り・住み続けたい気持ち・友人や知り合いの多さ
●主観的幸福度と居住満足度について、幸福度は居住満足度ほどバラつきが少ないと言えます(図1)。なお、平均値と標準偏差はそれぞれ65.17、2.69(主観的幸福度)、62.17、5.90(居住満足度)でした。
●街への誇りや住み続けたい気持ちとの関係でも、主観的幸福度に違いは出にくい結果となっています(図2・3)。
●主観的幸福度と友人や知り合いの多さについては、回帰式の傾きがマイナスであることから、友人や知り合いが多いと答えた人が多い地域では、幸福度が低くなる傾向があると言えそうです(図4)。
※縦軸の主観的幸福度は、1~10の10段階で、値が大きいほど幸福度が高くなっています。横軸の各項目については、100:そう思う、75:どちらかといえばそう思う、50:どちらでもない、25:どちらかといえばそう思わない、0:そうは思わないの5段階で回答を得ています。散布図では、市区町村ごとの平均値をプロットし、回帰式と決定係数を表示しています。なお、散布図のスケールを横軸と縦軸と揃えるため、主観的幸福度の値を10倍にし、100点満点としています。
- 主観的幸福度の構造(層別化された重回帰分析の結果)
- 主観的幸福度の構造(層別化された重回帰分析の結果)
主観的幸福度と正の相関がある要素
•女性であること(表1-①)、既婚であること(ただし、“死別の経験有り、再婚した”を除く)(表1-②)、学歴が高いこと(表1-③)は、目的変数の主観的幸福度にプラスの効果があります。
•建物の満足度も地域の居住満足度も、ともに正の相関がありますが、建物満足度のほうが地域の満足度よりも主観的幸福度へのプラスの効果が大きくなっています(表1-④)。
•自己認知では、未来は明るい、家族関係が良好、仕事が順調の効果が大きく(表1-⑤)、また収入満足度、社会的地位の満足度(表1-⑥)も主観的幸福度にプラスの影響があります。
主観的幸福度と相関関係がほとんど確認できない要素
•年代による違い(表1-⑦)、子どもがいること、世帯年収、金融資産、持ち家(表1-⑧)は、主観的幸福度との相関が比較的弱くなっています。
•街への気持ち(表1-⑨)は、主観的幸福度にほとんど影響がありません。
主観的幸福度と負の相関がある要素
•週労働時間が60時間を超える、および通勤時間が90分を超える(表1-⑩)と主観的幸福度が下がっています。
【表1の読み方】
一番左の列は、重回帰分析の説明変数一覧です。また「年齢、性別、婚姻状態、子どもあり、孫あり、世帯年収、世帯金融資産」については、階級区分(または選択肢)毎の影響を見やすいように、説明変数をダミー変数にしています。
●ダミー変数
ダミー変数とは、0もしくは1の値を取る変数のことです。例えば性別を例に挙げると、表1の『女性(対男性)』では、女性を「1」、対して男性を「0」とすることで、性別を識別する際に男女という二つの選択肢を1/0で一つの変数にまとめることができます。同様に、年齢の『30歳代(対20代)』という説明変数では、回答者の年齢が30歳代であれば「1」、そうでなければ「0」となります。年齢については、30歳代、・・・、70歳代、80歳以上とあり、全ての年代で値が「0」であれば、その回答者の年齢が20歳代であることを意味します。つまり、ここで得られる回帰係数を比較することで、どの年代が20歳代と比べて幸福度が高い傾向にあるか、ということを定量的に把握することができます。
●回帰係数とその意味
二番目の列は「全体」、三番目は「男性・女性」、四番目は「既婚・未婚」となっています。全体とは回答者数全員での分析結果を表し、回帰係数は、説明変数の回帰係数(重回帰式:y=b1・x1+b2・x2+b3・x3+・・・+a、で言う所のbi)を示します。回帰係数がプラスの値であれば、目的変数に対して正の相関、マイナスの値であれば負の相関があることを意味します。また説明変数が統計的に有意である(回帰係数が0であるという帰無仮説が棄却される)かどうか、判断することができます(表1では、*を用いて示しました) 。
●層別化分析について
三番目、四番目は、層別化分析の結果となっています。層別化とは、グループ化のことで、例えば、特定の条件(ここでは性別だったり、婚姻関係;一般的に交絡因子と言う)による影響を少なくするための処理のことです。表1で、グレー背景で示している箇所は対象外を意味し、性別で層別化した結果では、説明変数の女性(対男性)は分析に含んでいないことを意味します。
- 主観的幸福度の構造(パス解析の結果)
正の相関がある要素
•女性であること、未来は明るいと思っていること、仕事が順調なことは単独で幸福度を押し上げます。
•持ち家は建物満足度と正の相関があり、建物満足度は地域満足度と正の相関があり、建物満足度・地域満足度は幸福度を押し上げます。
因果関係がほとんど確認できない要素
•持ち家であること、世帯年収の高さ、大卒であることは幸福度に直接の影響を及ぼしません。
•大学偏差値の高さ、理系・文系も関係が認められません(パス図には表示はありません)。
•職業、雇用形態、業種、企業規模も関係が認められません(パス図には表示はありません)。
負の相関がある要素
•劣等感を感じること、下流だと思うことは単独で幸福度を引き下げます。
【手法の解説】
主観的幸福度がどのような変数とどのような結びつきを持つのかを、重回帰分析によって15変数に絞り込みました。図5はパス解析の結果で、主観的幸福度に対して、地域および建物に関する総合満足度(黒枠・グレー背景)・個人属性(黒枠)・その他「格差意識、その他満足度」(グレー枠)から矢印が伸びており、黒矢印は正の、グレーの矢印は負の相関、矢印の太さと数値の大きさが影響の強さを表しています。
- 住み続けたい気持ちの構造(層別化された重回帰分析の結果)
【重回帰分析の結果】
住み続けたい気持ちと正の相関がある要素
•居住満足度因子の生活利便性・親しみやすさ・静かさ治安は比較的大きな影響があります。(表2-①)。
•持ち家、建物の評価への高いことは、かなり大きな影響があります(表2-②)。
•街への評価の様々なチャンスがある、穏やかで静かな街だ、包容力がある、といった項目も正の相関があります(表2-③)。
•地元出身、年齢60歳以上は、かなり大きな影響があります(表2-④⑤)。
ある条件下で住み続けたい気持ちと正の相関がある要素
•既婚、子どもあり、孫ありは全体としての相関は弱いですが、地元出身ではない40歳以下の場合には正の相関があります(表2-⑥)。
住み続けたい気持ちと相関関係がほとんど確認できない要素
•居住満足度因子の行政サービス因子による影響はほとんどありません。
- 住み続けたい気持ちの構造(パス解析の結果)
【パス図の結果】
住み続けたい気持ちと正の相関がある要素
•住み続けたい気持ちを直接的に押し上げる要素は、影響の強い方から順に、愛着、誇り、持ち家、60歳以上、地元出身、となっています。
•歴史・伝統がある街では、それが街への誇りにつながり、誇りが愛着へ、愛着が貢献したいという気持ちにプラスに働くことが示されています。
•地元出身であることが、友人や知り合いが多いことにつながり、友人や知り合いが多いことが、誇り、愛着、貢献、地域の繋がりにプラスに働くことが示されています。
友人や知り合いが多い、という要素は地元出身であることと関係が非常に強いため、地元出身でない人に対して、どうやって友人・知り合いを増やしてもらうかが、住み続けたい気持ちを高める上で鍵となる可能性が示唆されています。
「住み続けたい」「街に誇りを持っている」「街に愛着がある」「街に貢献したい」と思うの4つの設問は、表3のように相関関係が強くなっています。そのため重回帰分析では、「住み続けたい」を目的変数とし、「街に誇りを持っている」「街に愛着がある」「街に貢献したい」は説明変数には使用しませんでした。一方、パス解析では、「住み続けたい」に対する「街に誇りを持っている」「街に愛着がある」「街に貢献したい」と60歳以上、持ち家といった影響の大きい変数で分析を行っています。
- 大型ショッピングセンターと居住満足度・生活利便性因子得点・人口増減率(ふるさと)
●大型ショッピングセンターがある街のほうが、同じ居住満足度であっても生活利便性が高い
居住満足度と生活利便性因子得点の間には正の相関がみられます。さらに大型ショッピングセンターの有無で分けてプロットすると、黒丸・直線のSCありの方(N=136)がオレンジ・点線のSCなし(N=607)よりも生活利便性因子得点が全体的に高くなっています。
●大型ショッピングセンターがある街のほうが、同じ居住満足度であっても人口増加率が高い
大型ショッピングセンターの有無で見るとSCありの方が人口増加率が高いことが伺えます。ただし、対象を都市部以外の都市に限定しているため、人口増加率がマイナスの点が表示されています。
※集計対象自治体は「街の住みここちランキング2021〈ふるさと版〉」の対象自治体(大都市圏や政令指定都市、県庁所在地などの都市部を除いた自治体)とし、大型ショッピングセンターは延べ床面積2万4千㎡以上(イオンモール基準)としています。全国の大型ショッピングセンターのデータは、一般社団法人日本ショッピングセンター協会よりご提供いただきました。
- 調査概要
株式会社マクロミルの登録モニタに対してインターネット経由で調査票を配布・回収。
◇回答者
全国47都道府県居住の20歳以上の男女、2019年・2020年・2021年合計521,456名を対象に集計。
[男女比] 男性48.2%:女性51.8%
[未既婚] 未婚36.2%:既婚63.8% [子ども] なし 42.4%:あり 57.6%
[世代比] 20歳代13.9%、30歳代22.6%、40歳代25.5%、50歳代22.1%、60歳以上15.9%
◇調査期間
2021年3月17日(水)~3月30日(火):2021年調査(回答者数:187,302名)
2020年3月17日(火)~4月3日(金):2020年調査 (回答者数:187,533名)
2019年3月26日(火)~4月8日(月):2019年調査 (回答者数:146,621名)
計521,456名
◇調査体制
調査企画・設問設計・分析:大東建託賃貸未来研究所 宗 健(所長)
調査票配布回収 : 株式会社マクロミル
◇回答方法
住みここちランキングは、現在居住している街についての「全体としての現在の地域の評価(大変満足:100点、満足:75点、どちらでもない:50点、 不満:25点、大変不満:0点)」の平均値から作成。街の幸福度ランキングは、非常に幸福だと思う場合を10点、非常に不幸だと思う場合を1点とする10段階の回答の平均を、100点満点にするため10倍して平均値でランキングを作成。住み続けたい街ランキングは、「ずっと住んでいたい」という設問に対して、そう思う:100点、どちらかと言えばそう思う:75点、どちらでもない:50点、どちらかと言えばそう思わない:25点、そう思わない:0点とした場合の平均値でランキングを作成。
•本リリースの一部また全部を、個人的な利用を目的とする印字・保存等、その他著作権法で認められる場合を除き、著作物等を著作権者等の事前の許諾なしに、複製、公衆送信、頒布、改変、他のウェブサイトに転載するなどの行為を禁止します。
•新聞・雑誌、テレビ・ラジオ等の報道関係者におかれましては、本リリースを掲載・報道または引用する場合には、「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2021<総評レポート>」と出所の表記をお願いします。
•報道関係者向けに、本リリースの集計項目のほかに個別集計結果を提供できる可能性がありますので、個別にお問い合わせください。
•本調査の対象となった自治体には、詳細データを提供可能ですので、個別にお問い合わせください。
•学術研究目的の場合、本調査個票データについて提供できる可能性がありますので個別にお問い合わせください。
▼詳細はこちら
https://www.eheya.net/sumicoco/
▼プレスリリースはこちら
https://www.kentaku.co.jp/corporate/pr/info/2022/sumicoco_summary2021.html
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