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Saturday, April 16, 2022

空き部屋から広がる笑顔 公営住宅を活用、子供食堂や障害者支援 - 産経ニュース

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市営住宅の空き部屋を活用して運営されている子供食堂。地元の子供たちが集まり、にぎやかな声が響いた=13日、京都市伏見区(渡辺恭晃撮影)

公営住宅の空室が増える中で、空き部屋を地域の課題解決に結び付ける取り組みが広がっている。京都市では、高齢者の見守り活動や障害者支援の拠点のほか、子供食堂としての活用もスタート。立地の悪さや老朽化が要因で増加する空室解消だけでなく、入居者の高齢化などで、維持が難しくなっている地域コミュニティーの再生に向けた新たな手段として注目される。

「この部首を組み合わせると、どんな漢字になる?」。13日夕、京都市伏見区の向島市営住宅の一室で、ボランティアで勉強を教える大学生らの問いかけに、子供たちがうなずきながら漢字のゲームや折り紙に取り組む光景が広がった。

折り紙を楽しむ子供たち(渡辺恭晃撮影)

集まったのは地元の小学生6人。午後6時からは、一緒に食卓を囲む。この日のメニューは、ハンバーグやオニオンスープなど。多くの子供たちが、ケチャップで口のまわりを染めながら頰張り、5年生の女児(10)は「オニオンスープを3回お代わりした。みんなで食べるとおいしい」と笑顔を見せた。

主催するのは、地域の児童館で食育活動などを行っている団体「藤の木子どもキッチン」。夕方以降の子供たちの居場所作りを模索し、市と検討を重ねて昨年12月に子供食堂の実現にこぎつけた。

京都市では、1月1日時点で市営住宅約2万3145戸のうち26%にあたる5968戸が空室となっている。部屋の状態などで公募できるのは588戸だが、新たな入居者が集まらない背景には、入居者の高齢化が進む一方で、人口減少や住居の選択肢が増えたことがある。

そうした中、市は空き部屋を地域活性化につなげる試みを推進。平成31年から龍谷大の学生が伏見区の田中宮市営住宅に入居し、自治会活動に参加したり、高齢者の見守りを行ったりしている。また、昨年4月からは向島住宅でも空室を障害者のグループホームに転用している。

子供食堂は月2回のペースで開くが、京都市に新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)防止等重点措置が適用された2~3月は自粛。団体は、この部屋を利用して月1回中高校生を対象に「若者食堂」を試行的に開催しているほか、高齢者の居場所作りにも取り組む予定だ。代表の山内忠敏(ただとし)さんは「久しぶりに元気な声が響いて活気が出る。今後は子供だけではなく、地域の幅広い人たちが利用できる場にしたい」と期待を込める。

京都市は今後も空室の活用を進める方針で、担当者は「空室を地域の課題解決に結び付ける手段としたい」と話している。

ウクライナ避難民受け入れも

国土交通省によると公営住宅の空室は全国的に増えており、令和元年度は平成27年度に比べ2・15倍の4万6787戸となった。昭和40~50年代に建てられたものが多く、設備も古いことが一因。市街地では倍率が数十~100倍の人気物件もあるが、立地が悪く老朽化した物件ほど借り手がないのが現状だ。

こうした中で、国交省は令和2年4月、新型コロナウイルス禍で解雇や失業を余儀なくされた人向けに、空室を提供するように自治体に通知。3年12月末時点で20都道府県と17政令市で計1441戸が確保され、813世帯が入居した。

最近では、ロシアによる軍事侵攻から逃れたウクライナの避難民の受け入れにも利用される。国交省は今月4日付で、公営住宅を利用するよう自治体向けに通知。大阪府吹田市では、首都キーウ(キエフ)から避難してきた親子が、市が無償提供する市営住宅で暮らし始めた。

空室をめぐっては各自治体でも有効活用への取り組みが進む。大阪市は平成20年度から、高齢者の生活支援や子育てサービスといった活動拠点としてNPOなどに提供。市の担当者は「地域コミュニティーの活性化に確実につながっている」と説明する。

住宅政策に詳しい神戸大大学院の平山洋介教授は、「老朽化が進むなどした公営住宅は借り手がいない」としつつ、「空室が多いからといって公営住宅は不必要だとの考えは間違っている。必要に応じて地域の活性化に貢献する形での使い方もあり得る」と指摘している。(田中幸美)

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